卒FITと組み合わせる蓄電池はVPPリソースになる


これまで「なぜ卒FITがそんなに盛り上がっているのか?」という視点で、
卒FITのメリットやそれにまつわる周辺ビジネスを解説してきました。

そのストーリーは、

①余剰電力の買い取りは、新電力にとってリスクを軽減する「調達」となる
→多くの新電力は電源調達をJPEX(卸取引市場)に依存しているため、卸価格の変動によってリスクが内在している。しかし余剰電力買取では、「調達価格」という視点では一定のリスク軽減となる。


②卒FIT需要家のメリットを最大化するには蓄電池が必要となる
→余剰電力買取だけでは、顧客はFIT適用時に比べ大きな収益減となるが、それを緩和するのが「自家消費」を増やすこと。そのためには蓄電設備を持ち、発電と需要の時間差を埋める必要がある。


ということでした。

もちろん①だけのメリットを狙い、将来的な「RE100」を考慮する企業もありますが、卒FITビジネスの盛り上がりの大半は②の蓄電池関連のビジネスを狙ったものです。そして、これまで普及という観点では停滞していた「蓄電池」という商材自体が、自家消費の促進という形で注目を浴びていることも含まれています。


しかし、事業者の狙いはそれだけではありません。
蓄電池を設置したその先に、「VPPリソース」として活用する道筋を描いています。


日本のVPPは珍しい2階層



日本のVPPは、世界的にも珍しいアグリゲーションコーディネーター(AC)とリソースアグリゲーター(RA)という2階層となっています。
そのため、デマントレスポンス(DR)や逆潮流を行う際の、送配電事業者(TND)とのやりとりは、ACのみがおこないます。
RAは直接TNDとやりとりすることはありません。



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出典:バーチャルパワープラント(VPP)・ディマンドリスポンス(DR)とは(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/about.html


そもそも、VPPビジネスが始まっている欧州や北米の市場では、①TNDとのやりとりを行うACという役割と、②リソースを集めてコントロールするRAという役割の両方を持ち合わせている事業者が、アグリゲーターとしてVPPビジネスに参加することができます。そのため階層構造はなく、①②のすべてのオペレーションやシステムを構築する必要があります。

なお、もし卒FITやVPPビジネスへ興味あるかたは、こちらのハンドブックは必見でしょう。
日本でのVPPの構造についてもイメージしやすい形で掲載されています。

ERAB(エネルギー・リソース・アクリゲーション・ビジネス)ハンドブック



シンプルに考えれば、この海外で採用されている方式が自然なのですが、日本では大きく2つの理由から2階層構造になったと言われています。

一つ目は、旧一般電気事業者、いわゆる電力会社がVPPリソースを直接確保することができない、ということです。
旧一般電気事業者、いわゆる地域の電力会社は会社規模も大きく、顧客数もずば抜けて多いため強固な顧客基盤がある、と思われています。
ですが、実際のところ自社のサービス(電力など)を使っている顧客は抱えているものの、直接コンタクトできたり、家に訪問するような関係性は持っていません。

自宅に置き換えて頂ければわかりやすいと思うのですが、地域の電力会社の電気を買っていて、毎月お金は払っているものの、自宅にピンポーンと来られると構えてしまうと思いませんか?「何か停電や故障でもあったのかな?」と考えると思います。
このように実は旧一般電気事業者と顧客の間には、「毎月の請求に対する支払い」以外の関係、他のサービスを勧めてもらって購入するとか、購入したものを自宅に設置してもらうとか、そういった関係はないのです。

そのため、VPPビジネスを始めるにあたって、旧一般電気事業者が考えたのは、「蓄電池を設置するなどリソースを集めること、リソースに直接コンタクトすることはできないから、集めたリソースのコーディネーションだけをやろう」と考え、ACという役割と階層ができました。


もうひとつの理由は、自由化前に実施された東京電力の法的分離です。
現在では2020年までに旧一般電気事業者の送配電部門は、法的に分離させることが決まっています。
ただ、例外として東京電力は自由化前の2016年に小売・送配電・発電の3社に分割して、ホールディングス制に移行しています。

これらはかいせ電気事業法を先取りしたものですが、この分割によって各社の独立経営が促進され、良いか悪いかは別として、同じようなテーマをそれぞれの会社で取り組むようになりました。VPPはその一つのテーマだったのですが、その制度設計の時に送配電事業者である東京電力パワーグリッド(東電PG)から、今の2階層構造となる提言が出たようです。

東電PGとしては、海外のように階層が無いVPPとなると、送配電事業者である自分たちは「買う側」にしかなることができない、という危機感があったのではないかと私は推測しています。2階層にすることで、ACという、あたかも送配電事業者がおこなうような役割を階層に持たせることで、VPPビジネスの中に参入できる余地を持たせたのだと思います。


これらの理由から、日本は世界的にも珍しい2階層のVPPビジネスが進められることになりましたが、これらが日本のマーケットに合っていたのかどうかは今後、実際のビジネスが始まってから分かることになるでしょう。





2階層だからこそ、「リソースを集める」だけが成り立つ


ただし、現時点でもこの2階層となったからこそのメリットを語ることができます。

前述の通り、海外でのVPP事業は①送配電事業者とのやりとり、②リソースコントロールの両方をカバーしなければ事業に参入することはできません。
とすると、VPP事業へ参入するだけでも、一定規模以上の投資が必要となりハードルが上がります。またシステムやオペレーションも複雑になるためランニングコストも小さく無い規模で必要となってきます。

ですが、日本が採用した2階層構造では、束ねれば一定量以上のリソースを確保でき、直接コントロールすることができるならば、②のみの参入が可能です。
リソースはこれから卒FITビジネスによる蓄電池ニーズの波に乗ることでバラまいていく計画があり、あとは同時並行で蓄電池を制御する技術を確立することができれば、十分VPPビジネスの一端を担うことができるのです。

実際日本では、企業資本がそれほど大きな企業ではなくても、蓄電池を販売・設置・工事をする体制を取ることができる中小〜中堅規模の企業はVPPビジネスを狙った動き、すなわち卒FITに対してのアクションを開始しています。
また、このような企業は独自に蓄電池制御の仕組みを開発することができないため、各蓄電池メーカーが「制御システム」の開発を開始しており、VPPが始まった際には蓄電池メーカーから提供される準備も進んでいます。蓄電池メーカーにとっては、この「制御システム」の良し悪し、価格や導入のしやすさ、様々なACとの接続性などが問われるようになるでしょう。

このように、足元の環境は整えられてきており「蓄電池を設置できる」企業、特に企業資本の小さい企業でも、VPPビジネスに参入しやすくなってきています。
2階層であるがゆえに、「リソースを集めるだけ」の役割が顕在化していると言えるでしょう。




卒FITは「濃い顧客基盤」を持つ企業にも大きなチャンス


卒FITビジネス、その先のVPPビジネスを考える上で、「蓄電池を設置できる」=工事の体制や技術を持つ/家庭1軒1軒を訪問することができるような企業に加えて、注目されているのは「濃い関係の顧客基盤」を持つ企業です。こういった企業はRAや蓄電池メーカーと組むチャンスが大いにあります。

電気・ガスの自由化でも顧客基盤を持つ企業は、新電力として参入し多くの成功を収めてきました。いわゆる本業の製品やサービスとのバンドルという形で顧客の囲い込みを進めてきました。

しかし、卒FITやVPPを考える場合、こういった顧客基盤に加えて「濃い関係であるか」という点が重要です。なぜなら蓄電池は100万円以上する高額な買い物だからです。訪問販売員の説明を聞いて納得をしたからと、ちょっと試しに切り替えてみるか、という性格ではないからです。
購入者が納得するような説明を十分に聞くことはもちろん、現地調査から設計・見積り、実際の設置工事、そして運用と、すべてのフェーズにおいて販売者と購入者の信頼関係が必要になって来ます。

そのためには、「ココの言う事なら信用できる」という信頼関係=濃い関係が必要です。この関係があるのであれば、顧客基盤の大きさは問われません。RAや蓄電池メーカーとしては顧客基盤の母数よりも、「どれだけ実際購入してくれるか」の期待値のほうが、高額商品であるが故にはるかに比重が高いのです。このような顧客との濃い関係性に自信がある事業者は、今からRAや蓄電池メーカーとタッグを組む検討をしても遅くはありません。



以上、卒FITビジネスを「調達」「周辺ビジネス」「将来的なVPP」という視点で分解し解説をしてきました。
では来週からは、すでに間近に控えている「卒FITのオペレーション」を説明していきたいと思います。







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