前回は卒FIT顧客を獲得するまでの課題でした。
旧一電と新電力の間には、情報量の差があり、それらを埋めようとする施策もあるものの、そのハンディキャップを背負って新電力は卒FITビジネスをおこなう必要があるということでした。

そして、今回の「顧客獲得後」についても同様に課題があります。


「支払い処理」を大規模に構築する難しさ



まずは卒FITビジネスの最もベーシックな業務ファンクションから。

卒FITビジネスは将来的にVPPリソースとしての期待はあるものの、まずは当面「余剰電力の買取」ということになります。
「買取」ということは、顧客である需要家(このビジネスに限って言えば”需要”家では無いのですが)からすれば、買取をしてもらう=代金を支払ってもらう、ということになります。

この「買取料金の支払い」というビジネススキームを構築するところに大きなハードルがあります。

通常、企業というのは「お金を回収する仕組み」はあるものの、「お金を支払う」ということに関しては自動化やシステム化が進んでいないのが一般的です。
こういった支払い業務はBtoBの企業はもちろん、BtoCビジネスを行う企業でも同様に、経理処理として手作業でやることがほとんどです。
何故ならば、企業の支払いは、基本的にBtoBだから。BtoCビジネスをしている企業でさえ、「支払い」と行為に関してはBtoBとなるからです。

そのため、卒FITビジネスを拡大させるためには、この「支払い」の業務オペレーションおよびシステムを構築する必要が出てきます。


この支払いのスキームをすでに構築しているのは旧一電です。
すでに余剰買取制度の対応のために、「毎月」、「計量した分を料金計算」し、「顧客ごとに支払う」というオペレーションおよびシステムを保有しています。
そのため、卒FIT対象者が出てきた前後で、業務をおこなう現場はなんら変わることなく淡々と処理をこなせる体制が整っているわけです。

この点についても、旧一電と新電力に置いてのギャップとなっていますが、ただこれは旧一電も自らが苦労し、投資をして構築をしたもの。
しかも送配電エリア全域を対象としているため、決して小さな投資ではなくどちらかといえば大規模なシステムになります。また個人情報である銀行口座を取り扱うため厳重な管理が必要となってきますので、管理コストだけでもバカにはなりません。
そのため、これはイコールフッティングではない、とは言い切れないギャップでだと考えます。

とはいえ、ハンディキャップであることは間違いありません。
新電力が卒FITビジネスを行う時には、ここの課題をクリアする方法を考えなければ行けません。「支払い代行」を展開するサービサーも一部存在しますが、どこまで大量処理ができるかは未知数です。



支払代行サービス|決済代行のSBペイメントサービス



「現金」を支払わないことも一つの解決策



では、どのような解決策があるでしょうか?
支払いスキームを構築するとなれば、必ず投資は発生するため、初期コストナシのオペレーションコストのみで対応する場合には、手作業する人員を増やす人海戦術となるでしょう。
こちらも、新電力の卒FITビジネスに関して言えば、それほどげ非現実的とは言えません。

というのも、卒FIT対象者は50万件以上いるとされていますが、アンケート調査によると「現在とは別の小売電気事業者に切り替える」と答えた割合は半数以下。(ちなみに下のアンケート記事のタイトルは内容とマッチしていません)
その母数を多くの買取事業者で分け合うわけですし、またそれらのSWをおこなう件数も一気に増加するわけではなく漸増することになります。
となれば、「当初は人海戦術で行く」としていても、まだ対応できる余地は残されているわけです。



「卒FIT」の認知度は7割、自家消費より「売電」望む




また別の解決策としては、「現金」のやりとりをしないという方向性も考えられます。



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小売側と買取側が同じ小売電気事業者である場合、買取をおこなった分を、小売(供給)側の請求代金から差し引く「相殺」という手段が一つあります。
人が住み、生活している家であれば、相殺をしてマイナスになるということはほとんどないため、こちらも有効な手段の一つです。

が、万が一空き家についている卒FIT太陽光パネルの買取を行った場合は、小売側の使用電力量はほぼゼロとなりますので、相殺を行うことでマイナスが発生=支払いの必要がある、となりますのでこの手段の場合は「支払いスキームは準備しておく」対応が必要になります。


また、もうひとつの現金やりとりを行わない方法としては「ポイント精算」という手段もあります。
もはやポイントは生活に密着したものとなっていますので、ポイント支払いでもなんら困ることはないという人が大多数です。そのため有効な買取対価の提供方法とはなる基盤は整っていると言えます。

しかし、そのポイントの使い道が非常に限定される場合は、せっかくのポイントを消費することができないため、買取メニューとして選択されることはないでしょう。
そのため、ポイント提携などで使い道の選択肢を広げておくことが必要になります。

またポイントの場合はシステム投資が必要となります。少なくとも「資金決済法」に準じた商取引を構築するためのシステム投資が必要となりますので、この点はポイント精算のデメリットであると言えるでしょう。
ただし、今やポイントシステムは一般化されており、ITシステムも多く、システムベンダー側も慣れています。そのため支払いシステムの構築よりはスムーズに、投資を抑えたものにはなるでしょう。


発電計画の提出はやっかい過ぎる


また別の視点からの顧客獲得後の課題は、「発電計画の提出」です。

以前、ご紹介したように、余剰発電買取をおこなう限り、その事業者は発電BGを組成しなければいけません。



卒FITビジネスのオペレーション① 準備編 : Japan Energy Market Today




発電BGが組成される、ということは「発電事業者」もしくはそれと同等とみなされるため、広域機関システムへ毎時の発電計画は必須となります。
ですが、同じ企業グループに発電所を保有している小売電気事業者以外は、発電計画提出の運用の経験がありません。そのためこの業務も、新たに構築する必要がある業務となります。

また業務構築の必要性だけではなく、「発電計画の精緻さ」という点でも課題があります。
発電計画を作成する限り、太陽光発電の発電予測がそのインプットとなります。ですが、太陽光発電は、空に雲がかかっただけでガクンと発電量が落ちるなど非常に予測が難しい部類になります。
そのため、現在でも太陽光発電の発電予測を精度高くできる事業者は限られています。

そのため、この予測を自社で、しかもあと半年を切ったこの段階から構築することは不可能に近い、と言えます。


また小売電気事業者のためにサービスを展開している需給調整アウトソーシングベンダーも、現時点では「発電計画提出アウトソーシング」のサービスに向けて動いている様子はありませんので、この業務を社外に切り出すことも当初はできない見通しです。


追記:さすがにアウトソーシングベンダーも動いてきました。やはりここは一つのビジネスチャンスとして新サービスを発表されています。



卒FIT電力買取り事業者向けのサポートサービスを提供開始 買取りに関わる業務・手続きをワンストップでサポート





サービス開始当初は「あきらめる」ことも選択肢


となれば、思い切った手段を採用するのも手ではないか、と考えます。
要するに、「正確な発電予測をあきらめる」ということです。何なら、「発電計画はすべて0」として提出するぐらいの思い切ったことをしてもいいかもしれません。

この手段を採用すると、発電インバランスが発生し、余計なコストが掛かるのですが、先ほども説明したようにサービス開始当初から何万件も買取をおこなうわけではありません。
となれば、予測システムを開発し、予測数値を発電計画に置き換え提出するシステムを構築するような先行投資や、人手で予測をして計画を逐一作成・提出するようなコストと、発電インバランスを比較するべきだと思います。

恐らく多くの買取事業者が、発電インバランスのほうが小さな損失で済むはずです。このような試算をすれば、サービス開始当初に限定すれば、十分取りうる手段になると考えます。


ですが、「サービス開始当初」だけ。ゆくゆくは増える獲得件数に対応したシステム構築=自動化は必要になると思います。
そのため試算段階で、投資などのコストと、インバランスの損失がクロスするような点をはじき出し、「何件獲得する頃にはシステムを構築をする」という計画は必要になってきます。
サービス開始を卒FIT開始に間に合わせるための、一時的な策だということは認識すべきです。








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