困った送配電事業者は市場から供給力を調達する



さて、法的分離によって発電事業者と切り離された送配電事業者は、それでも電力の安定供給のために何かしらのリスクヘッジや予備の電源を確保していかなければいけません。でも、今まで同じ会社だった発電事業者はビジネスをおこなう立場となり、ビジネスが成り立たない要求は聞いてくれなくなります。そこで、送配電事業者は「市場(マーケット)」からそれらを確保することになります。

このような仕組みにすべく、現在もっか議論中でして、「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会」というところで制度が検討され、決まっていくことになっています。


制度検討作業部会 (METI/経済産業省)



さてその内容ですが、こちらのタイムスケジュール表が最もまとまっています。



Schedule




出典:第31回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会 資料4 容量市場について P4(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/031_04_00.pdf

これは新設される市場のタイムスケジュールをまとめたもので、運用開始の目標時期が明記されています(一部開始済み)。この中でVPPビジネスに関わってくるのは「容量市場」、「需給調整市場」となります。





容量市場で、発電所の新設と規模の維持を狙う



容量市場とは、送配電事業者が安定供給を実現する際に、需要見込みに対して電源が足りなくなることが無いようにするための施策。それはイコール「発電所に投資しても、リターンがちゃんと得られるよ」とする内容です。

一般的に、発電所を建設すれば、発電を絶えずおこない、その電気を販売することで投資回収がなされます。しかし、買い手がつかない、もしくは販売の値崩れがあってはなかなか投資回収が進みません。また発電所を建設するには比較的大きな投資が必要となり、また投資回収の期間も長くなります。これだけ不安定で、ネガティブな要因が揃っていると、「発電所を新たに建設する」というモチベーションが下がってしまうことが懸念されます。

発電所が新設されない場合、送配電事業者は安定供給のための電源を確保できない状況になる可能性が大きくなります。そのような事態を防ぐために、自由市場(発電所と買い手だけの取引)に委ねるのではなく、送配電事業者が買い手となることで投資回収の一部に担い、また発電所の新設・維持のモチベーションを高めるために作られるのが容量市場です。

なお、この容量市場というのは発電所の容量(kW)を取引し対価を払いますので、規模の大きな発電所ほど有利だと言われています。kWが大きく、安ければ応札される可能性が高いということであり、もちろん独立系の発電事業者の参加も望まれていますが、基本的には旧一電の発電事業者のメリットが大きい制度だとも言われています。



その時に足りない電源を調達できる「需給調整市場」



需給調整市場とは、安定供給のために「まさにその時」に不足する電力(kWh)を取引する市場です。kWhなのでその断面において流れる発電量ということになります。

法的分離前はこれらの調整は旧一電の送配電部門と発電部門が連携しておこなっていました。送配電網に流れる電気の量が足りなくなると、需要を満たせないばかりか、電気の周波数まで狂ってしまうため、シビアにコントロールしていたのが中央給電指令所という部署です。ただし、現在ではほぼ自動化されており、予め決められた閾値を持って発電所の出力をコントロールしています。

ですが、これは旧一電の需要量がほぼ100%だからできたことであり、今後は需要の数十%が新電力となる状況では行えません。新電力はあくまでも供給力確保義務だけであり、その義務を果たせないときにはインバランスを支払って終わり、という制度になっているからです。最終的な送配電網の安定の責任は新電力ではなく、送配電事業者が負っていますからね。

では、不足する電力量を、送配電事業者がどのように確保するかと言うと、広く市場から募ります。「今、電気出せる人」というイメージです。また、下げDR(以前はネガワットと呼ばれていました)というもので、「今、使う電気減らせる人」も同時に募集します。この「出せる人」と「使うのを減らせる人」をアグリゲーターと呼び、このアグリゲーターが送配電事業者と取引をするのが需給調整市場になります。

現在一部の取引は、すでに調整力公募という形で、各旧一電の送配電事業者が主体となって実施されています。


平成30年度の調整力(平成31年度向け)の公募の概要|調整力の公募について|ビジネスパートナーさまへのご案内|送電・配電|関西電力株式会社



VPPは仮想であれ「発電所」だからできる



これらの2つの新市場に対して、新たなビジネスの可能性を見出し、でも「大規模な発電所を作る」以外の選択肢を選んでいるのが、現在VPPに取り組んでいる事業者です。VPPは仮想とは言え「発電所」ですので、容量市場、需給調整市場にも参加できるだろうという見立てであり、実際、この方式の市場制度を採用している国では、VPPが容量市場や需給調整市場に類似する市場に参加できており、それらは日本でも実現されるだろう、という見込みをもってのことです。

また、制度検討もこれらを実現できるようにとの方向で進んでいます。









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