VPPビジネスが具体的に動き出すのは2019年夏頃か



前回、前々回とVPPビジネスの基礎を解説してきましたが、現状ではまだまだ日本のVPPは制度や仕組みが固まりきっていない状態でもあります。というのも、VPPのメインビジネスであろう需給調整市場については、制度は大枠が決まっているものの、まだまだ細かい点では議論が続いていること、また入札に参加するVPP事業者側のオペレーションやシステムを具体的にどうすればよいのかが、まだ決まっていないからです。例えば、東京電力のサイトには「需給調整市場システムの開発に関する資料掲載について」というタイトルでシステム開発のスケジュールが掲載されていますが、2018年10月以降、更新が止まっています。また、資料の中では、入出力インターフェースについては2019年秋頃を予定しているとあり、VPPビジネスに新規参入する各社が本格的に動き出すのは2019年夏頃からではないか、というのが私の考えです。



需給調整市場システムの開発に関する資料掲載について(市場参入する事業者さま向け)|プレスリリース・お知らせ一覧|東京電力パワーグリッド株式会社




とは言え、動いている企業は動いており、すでに先行している欧米の現地に赴き、VPPの制度・仕組みの比較や、すでに運用を開始しているVPP事業者のオペレーションやシステムについて詳細を調べて、日本での事業の取り入れられないか、はたまた海外の事象者と組めないかの検討を始めています。ただしVPPは、対送配電事業者のビジネスであり、BtoBですので卒FITのように世間一般に対してリリースをすることや、ニュースになることは少ないとも見ています。「実はこっそりVPPやってました」という形になるであろうと思います。



改めてVPPビジネスの要素をおさらい



では、海外との比較のために、日本の市場の少しだけおさらい+もう少し詳細な仕組みを解説しておきます。

送電網の安定供給のために使われる「調整力」とは3つの要素があります。①kW(出力:長期的)、②⊿kW(出力:30分単位)、③kWh(電力流通量)の3つです。

①は中長期の電力需給に対して確保するもので、何年か先にこれだけ需要が増えるので理論値としてこれだけの発電所(合計出力:kW)が無いと困るよね、というものに対してインセンティブを与え、発電所を維持もしくは増やすものです。そしてこれは日本においては容量市場で取引されます。

②は短期的、日本であれば最小30分単位ですが、その需給バランス調整について調整力を確保するものです。「この30分間において、不足しそうなので誰か出せる人、手挙げて」という形です。これは即時性が求められるので、調整力の種類を分けて様々な応答時間の仕様が決められ、イコール周波数調整のための確保という位置づけになります。これは需給調整市場で取引されます。



Balancing service



出典:第8回 需給調整市場検討小委員会 参考資料  【DSR懇和会資料】需給調整市場において新たなリソースに期待すること(https://www.occto.or.jp/iinkai/chouseiryoku/jukyuchousei/2018/files/jukyu_shijyo_08_sankou.pdf


③は②において手挙げした人に対して「実際に送配電網に流してもらう電力量(kWh)」を確保するものです。海外ではこれも入札となることが多いですが、日本では②で応札した事業者が流す電力量の実績ベースでの精算になる見込みです。


あと、強いていうなら④周波数調整という要素があります。海外ではFrequency Responseというような名前で、日本における中央給電指令所がやる数秒~10秒単位の周波数調整を入札によって行うものです。これは日本においては②の需給調整市場に目的として含まれていますが、オープンにされているわけではなく今後も中央給電指令所がやる役割を担います。



先行している海外事業者も、基本的にはやっていることは同じ



では、細かな制度やシステムインターフェースが違えど、VPPが先行している海外マーケットと日本で可能性のあるサービスの何が違うか?についてです。

最初に結論を言ってしまえば、「ほぼ同じ」だと私は見ています。なぜならば「電気」と言うものの性質上、何か突拍子がないことができるわけではなく、国や制度が違えど同じ概念で送配電網をコントロールしているから。送配電事業者側が困るポイントも、新規参入事業者のビジネスチャンスも同じになってくるからです。

その内容とは大きく言えば、


  ▼蓄電池orEVを置くことでビハインド・ザ・メーター(BTM)での需給コントロールを可能にする
   
  ▼その結果、送電網からの買電or自家消費orグリッドへの逆潮流を選択できる

  ▼逆潮流分を予測し、マーケットを通じて送配電事業者へ売る


というシンプルなものです。

そこには何か特別なこと挟まるわけではありません。BTMの需給コントロールするためには原則的には蓄電池が必要になってきます。欧米であればセントラルヒーティング、日本であれば給湯器などもBTMの需要を増やすために使われますが、やっぱりそれには限界があって、「電気を溜めておく」という貯蔵機能がなければ需給コントロールとしては不十分です。ただし、日本は蓄電池からの送配電網への逆潮流は認められていないので、その点は考慮する必要がありますが。

またこれらBTMのコントロールによって買電をするか、自家消費をするか、送配電事業者に売るかが選択ができるのはどの国でも同じです。ただし、これらの選択肢を選ぶ際の基準となる「市場価格」のウォッチの仕方が違ってきたり、ウォッチする対象市場が細かく分かれていることはあります。ですが日本においては卸市場は一つであり、それに加えて②需給調整市場の売り価格を見れば良いだけですので、それほど難しいものではありません。(価格予想は少しコツがいるかもしれませんが)

逆潮流可能な電気量についても、前述した「蓄電池からの逆潮流はできない」という日本独特の要素を加味すれば基本的なコンセプトは同じです。PVからの逆潮流をメインにして、下げDRを組み合わせる、ということでシンプルに考えることができます。

このようなハイレベルで見れば、海外の事例も、日本で考えつくビジネスモデルもそうは変わりません。



早くアクションをしたモノ勝ちになる予感



では、日本の事業者は何に躓いて事業化が進んでいないか、ということですが、VPPを検討されている各社の様子からすると、「これで本当にいいのか?」という確信が持てないことが一番の要因だと思います。海外の事例も勉強した、日本の制度も詳しく調べた、そしてできうる範囲でビジネスも考えた。でも本当にこんなシンプルで、ひねりの無いことでいいんだろうか?という疑念が晴れないという状態だと思います。

でも安心してください。日本の事業者さんが考えていることはもうすでにVPPが始まっている各国と同じレベルにまで達しています。現行制度上、これ以上考えても新しいことは出てこないだろう、という内容にまで煮詰まっています。だから、今の日本においてVPPビジネスの成功の秘訣は「いち早く動くこと」だと思います。

その動きが早ければ早いほど、次はマネタイズの壁にぶち当たるでしょう。でもその壁は必要条件なんです。各国のVPP事業者もその壁をクリアするアライアンススキームやファイナンスモデルを考えたからこそ、今事業をやれているわけです。VPPはサービス内容ではなく、「どうやってお金の面で実現できるモデルを考えるか?」というかなりベタな、ビジネスクリエーションの部分に成功の秘訣があると思っています。

実際、現行の日本での蓄電池価格で事業採算を弾くと、相当厳しいです。が、それは逆に言えば、「どのぐらいの蓄電池価格になれば事業採算が取れる」ということがわかるということであり、また需給調整市場でこれだけの価格が出れば事業が成り立つということがわかるということでもあります。電力事業に限らず、損益分岐点(BEP)を考慮するのごく自然なことですので新規事業を立ち上げる事業計画としては十分なものだと思います。しかし、そのステージにまで行っている事業者さんは数えるほどです。これはせっかく事業計画を立てる段階にまでサービスが考えられているのに非常にもったいないと思いますし、そうやって「早く動く」ことが重要なんだと認識しているマネジメント層もまだまだ少ないと思います。

現時点での採算が取れないにしても、VPPビジネスを展開したいのであれば、早く数字で語れるような計画を作り、それ以外のオペレーション・システムの準備を進めていくことが最重要ポイントであると見ています。











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