需給調整市場とは⊿kW+kWhを取引するマーケット



VPPビジネスの基礎が分かったところで、今日からは実際のVPPビジネスの核となる「需給調整市場への入札」のオペレーションに焦点を当てて行きたいと思います。ただし、現在も需給調整市場の制度設計については議論中であり、概要となります。詳細の業務仕様やシステム仕様は2019年秋頃に発表されるとされていますので、詳細を掘り下げていくにはそれ以降になります。それでも、VPPビジネスを狙う事業者は、すでに業務設計やシステム調達に動き出しており、例え概要であったとしてもオペレーションを知っておくというのは損はありません。

では、まず需給調整市場の概要のおさらいです。

①容量市場
・国全体で必要となる供給力(kW)の取引
・市場管理者が買い手となり、発電事業者から買う

②卸電力市場
・計画値に対して不足する電力量(kWh)の取引
・小売電気事業者が買い手となり、発電事業者から買う

③需給調整市場
・ゲートクローズ(GC)後の需給ギャップ補填や30分未満の需給変動、周波数調整のための調整力(⊿kW+kWh)の取引
・一般送配電事業者(TND)が買い手となり、発電事業者から買う


という大きく3つの市場がある中で、③の⊿kW+kWhを取引する市場です。要するには、GC後というのは計画値上は小売電気事業者も発電事業者も一旦の調達・供給責任が終わっていて、あとはTNDによる需給調整が行われるのですが、TNDは独立した規制部門として発電所を持たないため、広く市場から調整力を募ろうという市場になります。

そしてその調整力が必要となる事象(誤差)は下記の4つが定義されています。


<需要予測誤差>
小売電気事業者が需要予測を外した時に現れる誤差。

<再エネ予測誤差>
FIT特例制度によって、「前日」の発電予測を正として計画値が提出されているため、当日の発電実績との差が出てしまう。この誤差のこと。

<時間内変動>
計画値同時同量では30分単位だが、実際の需要は時々刻々と変動しているという誤差。

<電源脱落>
いわゆるトリップと呼ばれる、予期せぬトラブルなどで電源が停止することによって生じる誤差のこと



これら4つの誤差にTNDとして需給バランスおよび周波数調整に対応するために、「調整力」というものを市場を通じて調達できるようにしています。

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出典:第11回 需給調整市場検討小委員会 資料4-2-2   (参考資料)需給調整市場について




需給調整市場に入札できるようになるのは三次②が2020年から



ではこの需給調整市場にはどのような電源が入札できるのでしょうか。
現在、需給調整市場の制度設計を進めている「需給調整市場検討小委員会」ではこのような電源が「調整力」である=入札できると定義・整理をしています。

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出典:第28回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会  資料5 需給調整市場について


一次調整力と呼ばれる主に周波数調整のための自動制御できる電源から、三次調整力②という比較的指令感覚の長い(45分)のFIT特例制度用の<再エネ予測誤差>の調整力まで5つが定義されています。ただし、表の下部、※を見れば分かる通りまだまだ議論の余地はありこの定義自体が変更になる可能性はありますが、大枠は決まったと言っていいでしょう。将来的にはこれら5つの調整力が需給調整市場に入札ができる=収益化できるようになります。

ただし、需給調整市場はこれら5つの電源受け入れが一斉に開始されるわけではなく、2020年に三次調整力②を3エリア広域運用でスタートし2021年には全国での広域運用に広げます。また三次調整力①も2021年から全国で、二次調整力②は2023年より全国で、一次調整力①②と二次調整力①は2024年から全国での運用がスタートすることになっています。

この調整力の定義とスケジュールはおいおい理解して頂ければ良いのですが、「三次=需給バランスに影響が小さいものから順次オープンしていく」、そして「2024年にはすべての調整力の全国=広域運用がスタートする」という2点を抑えておけばよいでしょう。


Open_schedule





今一度、三次調整力②とは何か?を理解



この三次調整力②ですが、改めて「どんな調整をしているのか?」を説明します。

三次調整力②は「FIT特例制度①もしくは③」を適用している電源によるGC後の誤差を調整するものです。FIT特例制度を適用していると、発電事業者の発電員バランス、小売電気事業者の需要インバランスのリスクがゼロになります。なぜなら、発電計画および調達計画(これは発電事業者と小売電気事業者の間でイコールの値となる)をいTNDが立案し、その数値をそのまま計画提出することで、発電インバランスが発生しても、それをTNDが被ってくれるからです。TNDは計画提出の前日までに発電計画を当該事業者に通知をしますので、


   ・X日の計画はX-1日の12:00にGC(前日計画)

   ・TNDによる発電計画数値はX-2日時点のもの


となるわけです。


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出典:第11回 需給調整市場検討小委員会 資料4-2-2   (参考資料)需給調整市場について


最近では天気予報の精度が上がったとは言え、やはり2日前の予測ですので、X日当日には予測が外れることが多々あります。これらの予測のズレの分の需給調整をTNDが行っています。現状では、発送電分離がなされていませんので(東京電力は除く)、TNDは同じ会社の発電部門に依頼し、需給調整分の電源の出力増減をしてもらっている=社内取引をしているわけですが、発送電分離後はTNDと発電部門は別会社となりますので社外取引=ビジネスとなるわけです。

ですが、発送電分離後もTNDと旧一電の発電部門だけが取引していると、その間は相対契約となりどのような価格や取引内容かが公表されませんし、新規参入者が入る余地がありません。そのため、需給調整市場をオープンさせることで、例え旧一電内の取引(TND=発電部門間)であれディスクローズな情報としていくこと、旧一電の発電部門以外の新規参入者を促すこと、また新規参入者の増加によって市場原理を働かせ三次調整力②の全体コストを抑えていくことの3つのメリットを発揮させようとしています。

まさに電力自由化・発送電分離がなければ創設されなかったであろう市場ということです。



業務仕様・システム仕様は2019年9月ごろに発表か



では、直近の三次調整力②についてのスケジュールを見ていくことにします。

この市場に参入したい方向けの説明会が2019年2Qの終わり=9月頃に予定されています。ここで需給調整市場に関わる業務仕様やシステム仕様などが公開される予定となっています。



System_Schedule




出典:第11回 需給調整市場検討小委員会 資料4-2-2   (参考資料)需給調整市場について



そのため2019年秋からは、VPP事業者各社の動きが活発となりシステム調達も本格化するでしょう。また、2016年年の電力自由化直前のようなシステムベンダーバブルが訪れるのか・・・と思うと開発リソースは今からでも確保したほうが賢明です。
なお、2020年1Q=1月には市場参入の申し込み開始も始まります。


次回はこの入札の具体的な流れについて解説します。









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