やはり電力自由化の中心は「小売電気事業者」であることは揺るがない



今日は電力自由化の本丸である、「小売電気事業者」についてのビジネスチャンスの話をしたいと思います。

小売電気事業者については現在600社を超える(※2019/6/27時点)登録があり、もはや収拾がつかない状況であると言っても過言ではないでしょう。また、その割には電力自由化に対する貢献の評価に関しては厳しいものがあり、それは好調な事業者よりも様々な理由でマーケットから撤退せざるを得ない事業者がどうしても目立ってしまうからでしょう。内情を知らない消費者(需要家)というのは、マスコミが植え付けるイメージによって非情な態度になりますので。

ですが、日本の電力自由化を現場で目の当たりにして、かつ20年前に自由化が行われてきた各国の状況を見ると、「電力自由化の中心はあくまでも小売電気事業者である」というのが私の意見です。どのような調達方法やトレーディング、VPP、DRなどの技術が発達しても、PVや蓄電池、EVなどが普及しようと、やはり、「電気を供給して、毎月請求をして、回収をする」というサービス業の縮図のような地に足の着いた業務を淡々とこなす小売電気事業者のビジネスに相乗りしようとしているに過ぎません。「相乗り」という言い方が気に入らないのであれば、BtoCビジネスで毎月何かを請求して、ちゃんと回収して、債権管理をする業務を構築してから、と言いたくなります。それほど、ビジネス=商売の王道とも言える大変な業務を日々こなし、それの積み重ねで成り立っている小売電気事業者には、私はリスペクトしかありません。



健闘している日本の新電力だが、「能動的なアクション」はいつか飽和に


そんな小売電気事業者のビジネスの進展度合いを表す「スイッチング数(SW)」は2016年の自由化開始からほぼリニアに成長しています。またパーセンテージを見ても、他国に類を見ないトップクラスの高水準で推移しています。「低圧分野・3年で12%」というのは立派な数字だと思います。



SW




出典:第16回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基 本政策小委員会  資料3 電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について



ですがこれはあくまで全体としての話であり、個別に見ればこうはうまく言っていない事業者も少なくありません。また今は好調な事業者も、この先もこの状態がずっと続くわけではありません。

なぜなら、「既存電力会社からのスイッチング」というアクションは、あくまで需要家の能動的なアクションに委ねているからです。広告をおこない、キャンペーンを打ったとしても、どうしても「能動的」に動いてくれる消費者というのは上限があり、いずれ頭打ちになるからです。これが需要家に取っては受動的なアクションで済む、「この機会に、こちらのサービスに加入いただくと、非常におトクですよ」というような類のついでのサービス加入のような形であれば、その上限は能動的なアクションを末よりも、比べ物にならないほど上がります。消費者の購買心理をうまく利用することができ、行動経済学を適用することができ・・・という範囲が格段に広がるからです。

また「この機会に」というメインのイベントが大きく、めんどくさく、煩雑であるほど、”ついでに”おこなうアクションの重みは相対的に軽くなり、安易に加入してしまうというのも、悲しいかな真実でもあります。今後、新電力はこういったスイッチングを狙っていくだろうと、私は考えています。

しかし、そんな都合のいいマーケットがあるのか?という疑問が出てくると思いますが、実はこのようなブルーオーシャンとも呼べる領域が、小売電気事業には残っています。



「年間100万件」という数字が魅力のマーケット「新設」



その領域とは「新設」です。2014年にスイッチング支援システムの「システム化対象外」とされ、自由化された直後は受付方法すらもあまり公になっていなかったあの新設です。

新設は主に、その地点の建物を新築する際に行われるオーダーです。何もない更地に電力メーターを設置することからこの名前がついています。現在、この新設に関して公に申込みを受付けている新電力は皆無に等しく、ここに関しては従来通りの手続きができる旧一電の独壇場となっています。


現在の新築年間着工数は約100万戸弱です。この着工数は今後10年緩やかに減少すると予測されているものの、それでも80万戸を維持します。


【2030年業界予測】 新設住宅着工戸数、87万戸台へゆるやかに減少|日本総研



新築のおこなうタイミングでは、需要家はどこの小売電気事業者とも契約をしていません。建物が完成し、引き渡しが完了し、入居する時点で小売電気事業者を選択することとなります。しかしこの時点で自ら新電力を選択する需要家は稀であり、またその選択肢があることさえも知らない需要家がほとんどだと言ってよいでしょう。そのため新築の場合、需要家が選択するのはほとんどが旧一電の料金メニューです。




すでに新電力は「新設マーケット」でも戦えるケイパビリティを持っている



2016年の電力全面自由化の時点では、異業種から新規参入してきた小売電気事業者は電力ビジネスについてのノウハウがまったくありませんでした。そのため「過去実績」を基にした顧客獲得を重視します。この場合の過去実績とは「検針票」です。検針票に書かれている契約容量や、使用量、供給地点特定番号などの情報を「正」として扱って業務オペレーションを構築しました。逆に言えば、検針票を取得できないタイミングでの顧客獲得は、業務として対象外にしました。なぜなら正として扱うべき情報を検針票以外でどう入手するかが見えなかったためです。

新設や、新築に入居するタイミングの顧客獲得も同様に対象外とされました。このタイミングでは「この家に対しての適切な契約容量はいくらか?」「ひと月の使用量はいくらか?」という「正」な情報が手に入らず、また当時の新電力にはそれらを正確に予測するすべもなかったからです。

ですが、自由化から3年が経とうとしている今、新電力側には十分なノウハウが蓄積されました。例え、過去実績がなくともある程度の精度で適切な契約容量や使用量を推測できるようになりましたし、またそれらの妥当性を判断できるだけのデータを持っています。また、これらの推測が外れようとも、これまでに獲得してきた顧客ボリュームによって影響を薄めることができ、オペレーション上や収益上の問題を抑えることが出来ます。

また、ポジティブな面からも「新設」というのは魅力ある市場です。
現在の家庭向け低圧のトップ新電力は約200万件の獲得数で、トップ10には数十万件を獲得した新電力が続きます。200万件や数十万件という数は、冷ややかな反応が多かった自由化前の下馬評を十分にひっくり返すだけのインパクトがあります。しかしその数に匹敵する「100万件」という数の新設が毎年行われており、そしてそれはほぼ100%旧一電の顧客となっています。しかもそれは今後10年間はそれほど減らないで推移すると予測されています。数字の面から言えば、新電力としてはこのマーケットへの触手が伸びないわけがないとも言えます。


この魅力ある「新設」マーケットへのアプローチのアイデア、そして実際の業務オペレーションについて次週以降解説をしていきたいと思います。










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