新設に対応する=オール電化住宅へ提供するTOUメニューを準備するということ


さて、2回に亘って「新設」を対応することのメリットと、業務の大まかな流れを解説してきましたが、今回は新電力が新設対応することへのハードルについてです。この点をクリアしなければ年間100万件発生する新設というチャンスを取り込めません。そのハードルというのは「オール電化住宅」への対応=TOU(Time of Use)メニューへの対応です。



Ceranfeld



下記の富士経済の調査レポートを御覧ください。


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個人住宅の新築におけるオール電化住宅の割合推移と予測です。2011年度にはオール電化住宅は母数の60%を占めていたものが徐々に減少し、現在では約半分となっています。ですが、個人住宅新築の大きな割合を占めることには変わりはありません。

そのため新電力が新設マーケットを取り込もうとすると、自ずとオール電化住宅向けの小売メニュー=TOUメニューを準備する必要があるということです。





まだまだTOUメニューに必要性に駆られていない新電力も少なくない



現在、オール電化住宅向けTOUメニューを提供している小売事業者はまだまだマイノリティーです。それは何故かというと、大きく3つ理由があります。

一つは新電力が利用しているシステムがTOUメニューに対応していない場合。全面自由化から3年以上が経った今はだいぶ少なくなってきましたが、料金メニューを設定する顧客管理システム(CIS)側が追いついていないというケースです。TOUメニューは時間帯による単価設定、またその単価設定ごとの料金計算結果を請求書に表示する機能等が必要です。CISとしてこれらの機能を具備していない場合は、新電力がTOUメニューを提供したくとも、できないということになります。ですが、CISも改修やアップデートをおこないTOUメニュー対応していないCISは少なくなってきました。


2点目は、まだまだ従量メニューのみで新規獲得が好調であり、TOUメニューを作る必要性が無い場合。これは比較的獲得が好調のTop20ぐらいまでの新電力に限ったことですが、別にTOUメニューを提供してオール電化住宅の顧客を取り込まなくとも、新規獲得が好調であるがために、わざわざリスクを抱えてTOUメニューを開発し、提供するということを積極的に行わないということです。ただ、私はこういった消極策でTOUメニューの検討を進めないということはやるべきではないと思います。なぜなら、現在の日本の電力自由化におけるSWは3年間で15%超と非常に好調ですが、好調故にどこかで頭打ちになることは確実であり、その時になってTOUメニューを準備し始めても遅いかもしれないという危機感を持つべきだからです。私個人の意見としては好調な事業者ほど、今余力があるタイミングでTOUメニューを準備・開始し、いずれ迎えるSWの頭打ちという事業成長の踊り場に対応しておくべきだと思います。





TOUメニューは圧倒的にサンプルデータが少ないため検討しにくい



最後の理由は、これが最も大きな原因かもしれません。それは、新電力側にTOUメニューを提供してもよいかどうか判断し、新メニューを新規に開発するスキル・ノウハウが不足しているという場合です。

TOUメニューを開発する場合、これまで獲得した顧客(=従量メニューの需要家)とは異なる需要カーブをまず入手する必要があります。しかしこのデータは旧一電以外はほとんど保有することなく、社内でオール電化メニューを利用している方を探して個人的に提供してもらうのが関の山です。このような点でどれぐらいの時間帯で、どれぐらいの消費電力量なのか、といったサンプルを十分な数で集めることが、まず大きなハードルとなります。この点はオール電化住宅をほぼ牛耳っている旧一電とのハンデキャップです。

また例えサンプルデータを集めてたとしても、それらの電力量データを使ってレートメーク(単価設定の試算)をするには一工夫必要です。JEPXの過去数年分のデータ、相対電源の調達単価、そしてサンプル需要家のロードカーブに当てはめて、最も収益が最大化されつつも競争力のある単価設定にする、という一連の流れはなかなかに骨が折れる作業です。また時間帯ごとの単価設定もキーポイントの一つです。調達側のコストを見つつ、需要家のロードカーブと照らし合わせて、旧一電のTOUメニューとも比較して、安い単価の時間帯、いわゆる「夜間」を何時から何時までに設定するかも微調整と試行錯誤が必要です。

こういった一連のメニュー開発タスクをこなして、新規メニューとして発表に至るまでをグイグイと推し進められるスキル・ノウハウそして経験が不足しているのです。




今後のビジネスを考えるとTOUメニュー検討のスキル・ノウハウは蓄積しておくべき



ですが、私のコンサルティングの経験上では、そろそろ新電力としてもチャレンジしてみて良い領域であり、取り組んで決してマイナスになることはないと考えています。

実際、既存のオール電化メニューに対抗するための料金メニュー開発を支援するプロジェクトを行うと、検討のプロセスにおいて新電力に「TOUを検討する際のスキル・ノウハウ」が蓄積されるのを目の当たりにしてきました。旧一電でしか豊富に持っていないようなサンプルデータがなくとも、適切な推測と条件設定で検討進めることは可能ですし、かつ実際に微調整と試行錯誤を行うことで電力ビジネスのキモでもある「調達コストとレートメークの関係性」への理解も進みます。何よりも、現在のJEPXの状況や旧一電のTOUメニューと細かく比することで、ほとんど勝負にならないと思っていたものが実は「TOUメニューは新電力でも提供できる・勝てる」という実感が伴うことが大きいです。

この実感さえあれば、例えTOUメニューを今すぐに提供しなくとも、新電力は奥の手を常に持っている余裕と安心感を持ってビジネスに臨めますし、必要性が高まればTOUメニューをいつでも提供できる状態にあるわけです。また、TOUメニューを単体で提供するのではなく、PVや蓄電池を組み合わせた新規メニューを開発する場合や、はたまた家庭向けだけではなくてBtoBのDRメニューを提供する際にも転用・流用できるのが、このTOUメニュー開発のスキル・ノウハウです。これから卒FIT、VPP、DRというリソースアグリゲーションビジネスが盛んになるとされている電力小売のマーケットにおいて、こういった幅のある検討ができることは、常に新しいことに取り組み続ける必要のある新電力に取っては大きなアドバンテージとなります。

そのため新電力は、実際に提供開始をするかは別として、今このタイミングで一度TOUメニュー検討のスキル・ノウハウを蓄積すべきだと考えます。近い将来、必ずこのスキル・ノウハウが必要になる時が来るためです。そのために、実際にTOUメニューを提供するとなれば直近のビジネスとして立ち上がる可能性の高い新設マーケットをターゲットにして、検証をしてみる価値が十分にあると思います。そして得たスキル・ノウハウは分散型電源を組み合わせたメニューの開発や、DRや需給調整市場への参画というリソースアグリゲーションビジネスへの参入にも大きな原動力となるはずです。







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