フロント部門が行う「サービス企画」はまだまだコンセプトレベル



何か新しいサービスメニューを追加したいとき、というのはエネルギー事業者の中ではよくあることです。しかし、これらの新規メニューを考え、企画するのはフロント部門です。フロント部門とは営業部や企画部、マーケティング部のように他社と会話をして、アライアンススキームを作っていくことをミッションとしている部門と定義します。


この時、フロント部門はまさに新規事業を地で行く、「ゼロから1を作る」という作業を行います。まったくスキームが無かったところに新しいスキームを形成する、その新スキームが経済的に成り立つかを検証する、また成り立つように試行錯誤を繰り返していく、ということを生業としておこないます。

もちろん、他者があり、かつ経済的な検証までするためにかなり踏み込んだ議論を行うのですが、残念ながらこの段階ではサービス仕様はまだコンセプトレベルです。



サービス仕様が抜け漏れだらけだとその後のトラブルの原因に




一つ例を出すと、電気の小売を始めていた小売事業者が、ガスもメニューに加えたいという時。フロント部門は


 ・何処のガス事業者と組むか
 ・どのエリアでおこなうか
 ・小売/取次/代理のどの形態でおこなうか
 ・その形態は自社の戦略とマッチしているか

というスキーム面のを検討しつつ、

 ・そのような顧客メリット(≒割引)を出すか
 ・その時に経済的に成り立つか

という経済面の検討も同時におこないます。

そしてこれは相手がいることもあり、社内の意思決定をおこなうために時間がかかることもあり、また自分だけががんばってもどうにもならないことが起きるステージです。

そのためなかなか成果に繋がらない息の長い仕事であると同時に、一種の虚しさが残る仕事でもあります。


ですが、こういった「新サービス企画の大変さ」を差し引いたとしても、業務・システムを司るバックエンド部門から見れば、まだまだサービス仕様は甘く、抜け穴だらけにしか見えません。

こういった状態で、フロント部門からバックエンド部門に「新サービスをやりたい」という相談があるために、この部分で頻繁にコンフリクトが起きます。まだまだ業務やシステムを決めて何かアクションを取れるような状況ではないにも関わらず、フロント部門は「決めるべきことは決めた」とバックエンド部門へ任せてしまいます。

こうなった時点で、新サービス企画の牽引役が不在となるため新規サービスはなかなか立ち上がることがありません。また、無理やり立ち上げたところでサービス仕様未定の部分は、業務・システムの裏付けがないためにサービスイン後にトラブルの温床となります。


まずは約款に記載される項目を押さえる



エネルギー自由化が行われた市場では、事業者は常に新しいサービスを開発していくことが、生き残りをかけたマストハブのケイパビリティです。新しいサービスをどんどん開発しリリースし、サービスインできる事業者は圧倒的に優位なポジションを獲得できます。

しかし、新しいサービスを次々と立ち上げる裏で、業務・システム(いわゆるオペレーション)が整然と構築できていない場合、タイムスパンの違いはあれど必ずそのほころびは表面化します。これでは優位性を築くどころか逆に足枷になってしまいかねません。


こういった状況にならないように、新しいサービスを立ち上げる際に重視したいのがサービス仕様書です。


サービス仕様とは、コンシューマー目線で見れば「約款」であり、事業者目線で言えば「業務のオーダー種類とルール」です。業務のオーダーの大半は、約款を基にした顧客のアクションがスタート地点になることを考えれば、フロントからバックエンド側にサービス構築が依頼される時点では少なくとも約款の項目は網羅するのが理想です。


・申込の方法
・契約の成立と期間
・契約の単位
・供給の開始条件
・料金メニューと割引
・料金適用開始の条件
・検針日
・料金の算定方法
・請求と支払いの方法
・支払い期日
・契約の変更
・契約解除


などは網羅しておかなければバックエンド部門は何も業務・システムの検討を進めることができません。


サービス仕様サンプル

図表:サービス仕様サンプル


「料金メニュー」はサービス仕様のごくごく一部



なお、サービス仕様というとフロント部門は「料金メニューと割引」にフォーカスをしてしまいます。ですが、料金メニューの単価などは最後の最後、リリース直前まで調整が重ねられるのが一般的ですし、相手方との割引原資の交渉次第のところもありますので、そうそう決まるものではありません。そのため、初期の段階、フロント部門からバックエンド部門へ業務・システム構築を依頼するタイミングでは、「料金の体系」を決めにいくべきです。

料金の体系とはどのような構成で料金が成立しているかを整理したもの。


・基本料金の有無
・従量料金の考え方と段階
・それ以外の課金項目の有無
・割引の種類(%なのか一定額なのか等)
・割引適用の条件

というような、料金はどのような項目で構成され、どのような計算をするかというもので、もう少しイメージしやすい形で言えば、「請求書の明細に書かれる項目」だとも言えるでしょう。

このようなサービス仕様を決めることがフロント部門の役割であり、責任でもあり、円滑な新サービス立ち上げには欠かせないものです。もちろんフロント部門だけでこれらを決めることは難しいこともありますので、必要に応じてバックエンド部門に現行の業務、システムの仕様を確認したり、新サービスを運用に乗せるためにどのようなサービス仕様にすればよいかを議論することになるでしょう。

ですが、これらはフロント部門とバックエンド部門の両者が協力して決めるべきものであり、どちらか一方だけで決めるものではありません。そのため、バックエンド部門はフロント部門がサービス仕様を決めきれない場合や、決めることに非協力的である場合は、新サービスの業務・システムは時期尚早だとして突っぱねるべきです。部門間のパワーバランスや、経営陣のサービス開始の意思決定により、そうは言ってられないケースも多々あるでしょうが、だからと言ってサービス仕様も決まっていないものを業務・システムに落とし込めるほど、運用側は万能ではないということをフロント・バックエンド部門の共通認識として持つことが、新サービス立ち上げにおいて最も重要なことでもあります。









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