意義は「新電力がベース電源にリーチできること」



では通称「貫徹委員会」の第1回の時点で、優先取り組み事項として挙げられていた「①ベースロード電源市場の創設」に関して説明をしていきます。



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出典:電力・ガス取引監視等委員会(第201回)資料3-5 ベースロード市場創設に関連したガイドラインの整備について




まずこのベースロード市場ですが、開設の目的は「更なる競争活性化」です。これはどういうことかを説明するには、電源の買い方をご説明する必要があります。
旧一電、新電力に関わらず、すべての小売電気事業者は「計画値同時同量制度」に基づいて電源調達をおこなっています。計画値同時同量とは、電源調達の面に絞ると、


・小売事業者単位で予測される需要値の合計を「計画」として提出

・その需要計画値と同量の電源を調達する必要がある


ということです。


ここで、一般的、標準的な需要値(ロードカーブ)を見ると、「夜は低く、昼間高い」というような、0時~24時間を横軸に取れば山のような形になります。この山のポコっと盛り上がっているところの上から「ピーク」「ミドル」「ベース」という切り分けをおこないます。そしてこの分類は上から順に電源の価格が高い順になってもいます。

ベースと呼ばれる、その小売電気事業者の最低需要値をまかなえる、24時間ずっと調達をしている電源はいわゆる「ブロック」と呼ばれ通常長期(1年以上~)の契約になるため、売る側の発電事業者に取っても安定して販売できるオイシイ電源です。



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ですが、このベースと呼ばれる部分の電源は、安定して24時間稼働でき、かつ比較的安価な電源である必要があります。またピーク、ミドルに比べて単価は安いため、発電事業者側もピーク、ミドルで販売してもなお残った部分でしか対応できないため、現実的には新電力はほとんどリーチできていない電源でもあります。実際に保有電源の割合を見ると、旧一電とその関係会社で日本の電源の86%を占めており、当然ながら旧一電の発電事業者は、優先的に旧一電の小売事業者に電源を販売するわけでして、石炭や大型水力、原子力というベースロードは新電力は入る余地がありません。


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開放するために課題の「相対契約」と「取引価格」



この「当然ながら旧一電の発電事業者は、優先的に旧一電の小売事業者に電源を販売する」という箇所ですが、実はこの点には2つの課題が潜んでいます。

一つは、「相対契約」によって、発電事業者と小売事業者間の個別契約によっては販売されてしまうと、レギュレーターであるMETIは入り込む余地はないということ。これは2020年の送配電会社の法的分離後も、通常のビジネス取引として何ら問題はありませんので。

ですが、ここにレギュレーター側は「旧一電」と「新電力」という区分けを設けて、実質まだ独占状態にある旧一電側にメスを入れたわけです。旧一電が保有する電源、特にベース電源に関しては自由経済の原則は適用しない=一定の義務を課すことができる、ということです。


もう一つは、その相対契約の不透明性。元は旧一電の同じ会社同士ですので、相対契約と言ってもその前は社内取引だったわけです。となれば、市場価格ではなく原価で取引していてもおかしくない。原価で取引するこということは、それはまた価格競争力にもつながり、どんどん新電力が負けていく状況になるかもしれない。

これらの解消のためにレギュレーターは、グロスビディング、会計透明化による取引価格の透明性担保などを課し、さらに一定量を新電力にも分けて上げなさいとベースロード市場の創設に至っているわけです。


ちなみに、これらのレギュレーター側の施策に対抗するのが、「発販一体」と呼ばれる法的分離後の形態です。



一般送配電事業の分社化に向けた分割準備会社の設立について



関西電力が一早くプレスリリースをしていますが、送配電事業者の法的分離後も、発電事業と小売事業は同じHDカンパニー下にあるストラクチャーです。このストラクチャーでは、発電事業の利益減を、小売事業者の利益増で相殺することができるため、実質的には以前の原価での取引も行えるという柔軟な形態です。(実際には発電事業、小売事業ごとに会計公開されるので詳しく見れば分かりますが)



ベース電源は「容量市場からの収入」によって補填



では、このベースロード市場ですが、どのような構造になっているかを見ていきましょう。

まずは価格です。せっかくベースロード市場を創設して、旧一電の電源に新電力がリーチできるようになっても、その価格が高くては意味がありません。コスト感が合わなければ、新電力としてはベース電源にさえ活用できないからです。

そのため、日本では価格を抑える方法として「容量メカニズム」を採用することにしました。この容量メカニズムに関しては容量市場の説明の時に詳しくご説明しますが、簡単に言えば「国全体として必要なkWを確保してくれる発電事業者にはお金(補助金のようなもん)を上げるよ」という制度です。kWの確保ですので、稼働してkWhを出しているかどうかは関係なく、発電所を維持しているだけでもらえるお金です。

ベースロード市場では、この「容量市場の収入」を発電平均コストから差し引くことで、ベース電源の上限価格を決め、そこから下の価格レンジで市場取引してね、という構造になっています。


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理論的にはすべての新電力に行き渡る量が拠出される



もう一つ気になるのが市場に投入されるベース電源のボリュームです。せっかく安価なベース電源が手に入る市場ができたにも関わらず、数%の新電力しかその恩恵にあずかれないとなると、そもそもベースロード市場を創設した意味がありませんからね。

このボリュームを、旧一電側から見ての言葉で「拠出量」と言います。この拠出量は、


・新電力の需要量 × ベースロード比率


として決められますので、これは理論的にはすべての新電力がベース電源を調達できることなります。ちなみに開始年度である今年、2019年で言えば、560億kWhが拠出料として算定されています。


また、量への監視と並行して拠出価格の監視も行われます。基本的には、下記の2つの観点で監視されます。




【拠出価格の監視】
①ベース電源の発電平均コストを基礎とした価格(供出上限価格)以下で供出されていることを確認。

②小売平均料金を参考にして、小売り部門の調達価格の説明の妥当性を確認した際に、小売部門のベースロード電源に係る調達価格が供出価格を不当に下回っている場合には、供出事業者の供出価格の精査等の対応が必





なお、この②に関しては、旧一電内のグループない取引の卸価格を比較するのではなく、小売事業の収入・費用を分析し、「コレぐらいがベースロード費用だろう」と予測される金額を比較対象とされます。

先程の発販一体の牙城を崩そうというレギュレーター側の厳しい姿勢が見て取れます。このベースロード市場は、容量市場の収入に肩代わりする部分はあるものの、基本的には旧一電側に厳しい制度となっているというのが私の意見です。別に義理もない、自分たちのビジネスの脅威でしかない新電力に対して、安価に使える電源を一定量開放するという制度なのですから。容量市場の収入ぐらいでは賄えないほどのマイナスがあると言っても過言ではありません。

その一方で、レギュレーター側としては「電力自由化」を推し進めるためには、新電力が競争力のある電源にリーチできることが必須条件であると考えているためにこのような制度を推進せざるを得ません。オーガニックな電源開発に頼っていては5年10年と掛かってしまいますし、何より総括原価方式に庇護されてきた下で設備投資された電源に勝てる、自由経済化の電源は無いということ分かっているのではないかと思います。その視点から言えば、自由化を骨抜きにしないためにも旧一電の電源之内一定割合は市場に拠出するという姿勢は理解できるものでもあります。










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