入札・約定、現物引き渡し、精算のタイミング



電力全面自由化された2016年の秋から始まって通称「貫徹委員会」。そこで示された方向性の一つ「ベースロード市場」について解説しています。

旧一電と新電力にはベースロード電源にリーチできるかどうかの条件面の差異があるということで、旧一電からJEPXに向けて一定量=新電力のベースロード電源相当量を拠出し、取引をすることになったのがベースロード市場です。

今日はこのベースロード市場への入札方法など、オペレーションの方法と2019年7月に実施された第1回目の取引から考察をしてみます。


まずはその前に「ベースロード市場」の位置づけです。これは市場という名前がついているので、取引量と価格の決定については専用の板で行われると考えてください。実際は板はJEPXの用意する入札システム上にあり、スポット市場等と同様に事業者としてログインをして入札などの取引をおこないます。


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出典:JEPX ベースロード市場に関する説明会の資料



ただ、一点気をつけたいのはこの板では「量と価格のみ」決定するということ。しかもそれは来年度分(今回であれば2020年度分)です。また、実態としては「先渡市場」というスポット・時間前市場と同列にある別市場にて現物引き渡し・決済されますので、第1回の2019年7月の約定であっても、今回の約定分が現物引き渡しされ、精算されるのは2020年4月分(タイミング的には2020年5月)からとなります。


入札・約定、現物引き渡し、そして精算されるタイミングを掴んでおいてください。



買いの上限量はベースロード需要量を計算



では具体的なオペレーションに入っていきます。

まずベースロード市場の取引ですが、毎年7月、9月、11月に行われます。2019年分についてはすでにスケジュールが発表されているので確認しましょう。


取引情報:年度公開スケジュール|JEPX



この入札スケジュールの前に行う必要があるのが「買い上限量」です。これは、買い手側≒新電力の需要電力量のうち、ベースロードとして適正な量を購入するようにと設けられているラインです。

具体的には


  1.昨年度or直近1年間の1日の最低需要量の下位19日目の値


から


  2.適格相対契約量



を控除した量になります。

1.の量は「ベースロード需要量」と呼ばれるものであり、その新電力が必要とするベースロード=24時間365日調達が必要な量、という定義です。需要電力量は1日のうちに上下しますので、シンプルに言えば一番少ない需要電力量が24時間365時間調達が必要な量となります。ですが、最も少ない日を設定しまうと、その日は特別最低需要量が下がっていただけで、365日をおしなべて見ると本当はもっとベースロードが必要かもしれません。

このような状況をできるだけ排除するために、特に需要量が下がるゴールデンウィーク、お盆、お正月など特異日18日を指定し、ベースロード需要量=それ以外の日の最低需要量という定義にしました。それが、「下位19日目の値」となるわけです。



minimum Demand


出典:JEPX ベースロード市場に関する説明会の資料



また2.は個別に旧一電(の発電事業部門)と相対契約している量(実際は適格かどうかの様々な条件がある)で、これらは市場を通じて調達しなくとも、ベースロードとして調達出来ていると見なされ1.から控除されることとなります。


そして、1-2の量が「買い上限量」となるわけです。
(事業開始後1年以上経過していない事業者は、最大需要電力の見込み量が上限となります)



入札できるのは3商品



買い上限量の事前登録が終われば、次は入札です。
とその前に取引できる商品を見てみましょう。


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出典:JEPX ベースロード市場に関する説明会の資料



商品として3つ。エリアで分けられていて北海道、東京(東北と東京エリアをカバー)、関西(60kHzエリアをカバー)となります。この分け方は、JEPXでのいわゆる市場分断、連系線容量が不足して独立したエリアだけで需給バランスを取る必要があるケースの頻度を考慮して決められました。50kHzと60kHzの間はもちろん、北海道も市場分断が多いということです。

期間は4月1日~翌年3月31日までの固定、時間帯(型(タイプ))も24時間型のみです。

取引単位は0.1MW単位、入札は0.01円/kWh単位で可能です。



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価格の決定はスポット・時間前市場と同じブラインド・シングルプライス・オークション。

約定後は、受け渡しが完了する日(2019年7月の約定であれば、2021年3月31日まで)まで買い代金の3%を必要預託金として預けておく必要があります。
これが実は資金的にボトルネックになる企業は多数あるかと思います。約定日から、最大で1年半以上も「動かせないお金」が出てくるわけです。しかもそれは現物取引の決済とは別にです。この条件がネックになってベースロード市場に入札できない事業者も多数出てくると、このあたりのルールも変わるかもしれません。


あと、細かい点で言えば、約定1件につき10,000円が約定日の3営業日後の日に決済されます。


第1回の約定結果は、騒がれるほど悪くない



では、第1回の2019年7月の約定結果を見ていきます。


2020年度分ベースロード取引市場取引結果通知



今回の取引では、北海道が12.47円、東京が9.77円、関西が8.70円となりました。そして約定量はそれぞれ12.7MW、88.2MW、83.4MWです。


まずは約定量ですが、新電力が必要だろうと試算された量の560億kWhからすると、3%弱の取引ボリューム。最初とは言え少しさみしい状況ですね。まだまだ新電力は様子見と言ったところでしょうか。

価格については、確かに旧一電の小売部門が調達している価格や、自社発電所として高性能のGTCC(ガスタービン・コンバインドサイクル)を持っているような小売電気事業者に取っては魅力の無い価格ですが、その他多くの新電力に取っては十分意味のある価格になったんではないでしょうか。

少なくとも2018年のJEPXスポット価格の24時間・365日平均と同程度の価格感ですので、変動しない分、リスクヘッジとしては十分な価格だったと私は思います。

この結果を見て第2回の取引には、もっと多くの新電力が参加し約定量も増えるのではないかと思います。いろいろとネガティブな記事もありますが、スポット市場に依存していた新電力は少なく無いわけですので、改善点やさらなる供出上限価格の低減など課題はあるものの、また一つ日本の電力の自由化のステップが進んだと思います。








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